2024年6月12日 (水)

つぶやき:学生によるカスハラ

日本ではカスタマーハラスメントをカスハラと省略形で呼び、問題が深刻化していることが話題になっています。メディアで報道されるカスハラの様子を映し出す動画を見る限り、行きすぎた言動がカスタマー側からサービス提供側へなされる様子が確認出来ます。おそらく一昔前、クレーマーという呼び方をしていたものを、カスハラと名前をかえ、サービスを提供する側も防御対策を始めた、と理解出来ます。

つい先日、深夜1時30分に、締め切り間近の宿題に対する質問メールが届きました。この宿題は、約5日前に出題したものであり、しかも質問内容も学生本人の確認不足に起因するものでした。これらの点を考慮すると、「この質問メールに即座に対応しなければならない」と学生が思っているのであれば、カスハラ、つまり、学生の教員に対するハラスメントだなぁ~と思った次第です。

実は、上記の質問メールに限らず、深夜にお構いなしにメールをおくりつけてくる学生は多いです。一昔前、大学の教員の多くは、教員間では深夜早朝おかまいなしにメールのやりとりをしていました。(深夜に送ったメールに即返信がくるのが学者あるあるです。)日中は大学業務に追われ、社会的対応ができるのが深夜や早朝になるためです。そんな時代でも学生へは配慮していましたが、昨今は、教員間のみならず、学生への連絡も含めて、一般的に、メール送信は緊急性を伴わない限り、常識的な時間に、という暗黙のルールがあります。(海外の関係者とのやり取りは時間は今でも考慮は困難です。これは仕方有りません)

しかし、コロナ禍を境に、学生の質問自体がメールや(大学がオンライン授業用に運用しているコラボレーションプラットフォームの)チャット機能を通じたものが増え、その影響か、深夜1時や2時におかまいなしにメールが届き、しかも、1時間以内に返信をしないと、「まだですか?」と催促がくるケースもあります。この時間帯に起きて仕事をしているため、メールが確認出来る私も私ではありますが。。。

時間だけではありません。内容も、質問というより、強要に近い自分勝手な要望や主張も多くみられます。私が受けたものの中で、最近最も非常識と思えたのは、「いろいろと調査検討しなければならない問題を宿題として出題するな。出題するなら解き方を丁寧に説明した資料を添付しろ。(口調や内容は省略しています)」確認の為に申し上げます。私は大学の教員です。これを送ってきたのは大学生です。どう思います?まぁ、いきなり注意するのもどうかと思い、「どうしてそう思うのですか?難易度が高すぎましたか?」と返信すると、「問題無く解けた。しかし、時間と手間がかかった。だからメールを送った。」と返信が来ました。見栄むき出しに、やりたく無いことを先生の責任にし、先生にやらせようとしていることが明確になりました。

学生は、そもそもカスタマーではありません。私たち教員も学生へサービスを提供するのが仕事ではありません。例えば、「時間も手間もかけずに何かを修得できるようにする=宿題と一緒に解き方の説明書をつける」がサービスだと考えているとすれば、なおいっそう、そんなサービスを提供するのは教員の仕事ではありません。

学生の本分は、勉強です。勉強は手間暇かけるからこそ身につくものです。反対にいえば、答えを写すだけの勉強ばかりしている人は何も身につきません。答えを学生へ渡し、写させて合格にする教員が本当にいて、それがサービスが良い教員と主張するのであれば、それは教育者に対する冒涜です。

この学生、いろいろとやり取りをしているうちに、自分の言動が問題行動であることに気付いたのか(そもそも分かっていてやっているのか)、チャットの文言の大幅修正と削除という暴挙に走りました。(チャット内容の修正と削除ができるシステム)私としては、気付いたのであればよし、ということでそれ以上は追求しませんでした。しかし、画面コピーは証拠としてしっかり保存済みです。

とはいえ、行きすぎた要求だと思います。しかも、「教え方が悪い」といえば、教員が自分たちの勝手な言い分を受け入れると思っているところは悪質であると感じます。

というわけで、少しチャレンジではありましたが、授業はじめに、

そもそも、学生はカスタマーではありません。「自分たちは金を払って教員をやとっているんだ。だから、教員はサービスをすべきだし、どんな要求でも聞き入れろ」、という言い分はハラスメント行為です。カスハラ行為は昨今メディアでも取り上げられているとおり問題化しており、行きすぎたカスハラ行為は適性に処分されています。

と説明しました。

実は、教えていた学生に直接「金払って雇われている身だろう。言うことを聞け。」と言われた経験を実際に有している松永です。

参考までに、日本の国立大学の運営費に占める授業料の割合は約十数%だと言われています。大学などによっても異なります。つまり、大学の運営費の多くは国民の税金なのです。改めて、国民の皆様のおかげで勉強できている、という意識は持ち続けるべきだと私は思います。