2024年1月19日 (金)

Martin Luther King Jr. Dayの思い出:ニュートラルに物事を捉える

1月15日は、米国ではMartin Luther King Jr. Dayという祝日であることをご存知でしょうか?彼の誕生日である1月15日に由来しており、毎年第3月曜日に設定されています。今年は、第3月曜日が15日であったこともあり、彼自身の誕生日がMrtin Luther King Jr. Dayでした。

毎年この日になると、大学院時代の留学先であるUniversity of Wisconsin-Madisonの事を思い出します。留学するために初めてウィスコンシン州マディソンという街に到着したのがこの日でした。どうしてそれほどに印象深いのか?それは、経験した事の無い寒さだったからです。

どのくらい寒いのか?摂氏で氷点下20度くらいです。今年は?と思い、マディソンの天気を検索してみると、15日前後の数日間は、最低気温が-20度以下だったようです。福岡市で生まれ育ったため厚手のコートは必要ありませんでしたし、当時はダウンコートが今のように安く手軽に購入もできませんでした。それでも寒いところらしいということは分かった上で、当時、発売されたばかりのフリースと、競技場でスポーツ選手が着用しているベンチコートを購入してマディソンへ向かったのですが。。。どういえば分かってもらえますかね~何を着込んでも、身体が温まらない。外を歩こうとすると、ものの数分で死を意識するほど身体が凍える。毛皮のコートと帽子をかぶっている寒い国の人々を思い出し、ああ、あれがいるのね~とつくづく思いました。ちなみに、到着初日に宿泊した部屋はエアコン暖房のみだったため、寒さで夜も眠れず、掛け布団の上にコートやフリースなどを積み重ねました。それでも寒いので、子供の頃読んだマリーキュリーの伝記に、寒さをしのぐ為に家具を掛け布団の上に積み重ねた話を思い出した程です。

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何故このような話をするかと言いますと、他人にもたれた先入観を解くのは本当に時間と労力がかかるものだなぁ~とつくづく思うからです。だからでしょうね、人は、理解して欲しい自分を見た目で演出する。しかし、それにも限界はあるものです。できれば、勝手な先入観をもって他人を理解することをやめて欲しいなぁ~と日々思っております。

例えばの話、愛媛大学から東京の私立大学へ職場を移動したときの事です。松山市から八王子市への引っ越しでしたので、八王子の人々は、ここは寒いよ~、と私が寒い土地で暮らした事がまるでないかのような発言を繰り返しました。「八王子では体験できない氷点下30度も経験したよ」、といっても、「冗談でしょう」と聞く耳をもってもらえませんでした。

例えば、大学を移動した直後は、私の事を皆知りませんので、男性教員の中には「女の教員がいるはずがない」という先入観から、いろいろなことを私にする人がいます。多いのは、会議の受付の列に私が並んでいると、「教員でもないやつがこんなところに並びやがって」と押しのけられます。会議の会場に入ろうとドアに手を掛けると、「俺が先だ」と押しのけられます。もっとも驚いたのは、弁当が出る大学の仕事の際に、弁当ガラを捨てておけと投げつけられた時です。更に、大学電気系教員連絡協議会という全国の電気系の大学教員の集まりの席で、「電気系に女性の教員なんているはずがない」と、言われた事もあります。当時勤めていた大学の電気系学科の教員の代表として参加している人に向かってですよ。いずれも、私が大学の電気系の教員であることを認識すると、「松永先生でしたか~はじめまして」と急に丁寧に対応されるので、余計に残念な思いにかられます。

一般の人からの先入観で多いのは、工学部の大学教員ですというと、「ソフトウェア系でしょ?」と専門を決めつけられたり、「私立でしょ?」とか、「教員と言っても、教授職ではなく、助手でしょ?」とか、「常勤ではなく、パートでしょ?」とよく決めつけた言い方をされます。一番ひどかったのは、「どうせどっかの男にかこわれてるんだろう」です。平成や令和の時代にですよ。「どっかの男に囲われてる」ってどういう意味なんでしょうかね、笑。

どうして、ニュートラルな意識で対応できないのでしょうかね?

まぁ、見た目で大学の常勤の教授職であることを演出するのは、かなり難しいです。ですから、いつも、誤解を解くことに大変な時間と労力を要します。

米国のメンフィスで開催された国際会議で講演した時の事です。帰りの空港で手荷物を預けた際に対応してくれた係員(黒人男性)から、「メンフィスのどこが一番気に入ったかい」と質問された時の事です。「やっぱりMartin Luther King Jr.の記念館(National Civil Rights Museum)だなぁ~私、ここを長年訪ねたかったんだぁ~」と答えたときの事です。少し驚いた表情の後、優しい目で微笑み、あなたの荷物は大切に取り扱うよと言ってくれました。きっと、日本人がそんな事を答えるとは思ってもみなかったのかもしれません。(おそらく、日本人の多くは、Elvis Presleyと答えるのだと思います。)

先入観をもたず、ニュートラルに人も物事も捉えたいものです。

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