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2023年12月31日 (日)

2023年12月21日~22日にかけて、電子情報通信学会マイクロ波研究会及びIEEE MTT-S/AP-S Nagoya Chapter Midland Student Express Autumn(中部地区学生発表会)を、静岡大学工学部(浜松キャンパス)において開催しました。

マイクロ波研究会は、私が大学教員となって以来、専門委員や現地世話人として何度も開催してきましたが、静岡大学へ移ってからは初めての開催となりました。Midland Student Expressは、中部地区の学生さんが発表する場として長く親しまれてきた行事のようで、ここ数年は主催者として活動をしています。12月の研究会は、是非静岡大学で開催したいとマイクロ波研究会関係者からお声かけいただき、私の提案でマイクロ波研究会とMidland Student Expressを同時開催し、それぞれの参加者が交流出来る場を設けることにいたしました。マイクロ波研究会の関係者の方々には、同時開催へのご協力に心から感謝申し上げます。

Img_18981 マイクロ波研究会における松永研の学生さんの発表

松永研からは、2023年4月に開催されたMidland Student Express SpringでAP-S Award(最優秀賞)を受賞した大学院の学生さんがマイクロ波研究会で発表しました。発表タイトルは「高域放射特性を改善する2段テーパースロットアンテナ」です。内容ですが、高性能イメージング技術には欠かせない電磁波プローブアンテナの開発に関する研究です。電磁波を用いたイメージング技術の高性能化が期待されています。応用分野としてはマイクロ波マンモグラフィーのような生体イメージングや、コンクリート建造物の内部劣化の非破壊検査などがあります。これらのイメージング技術の高性能化には、様々な技術をそれぞれに改良し、そして組み合わせる必要があります。その中でも、イメージング用電波の送受信をするアンテナの性能は、ダイレクトに解像度に影響します。本発表では、イメージング技術に用いられるアンテナの放射特性を改善する新たな手法について提案しました。詳細は、マイクロ波研究会のホームページをご覧ください。

多くの方のご参加ならびに、発表内容に対する活発な議論ができましたこと、心より感謝申し上げます。私が大学院修士課程のころから発表をしたり、運営に関わったりと長年お世話になっておりマイクロ波研究会が、これからも日本の科学技術の礎となりますよう、私も微力ながらお手伝いしていきたいと考えております。

2023年12月11日 (月)

早いもので今年も師走となりました。毎年このブログに掲載することが恒例となりました冬のイルミネーションの写真です。このショッピングモールは毎年訪れるのですが、不景気を反映してか、年々簡素化しているように見えるのは気のせいでしょうか?もしかすると、これは簡素化では無く、温暖化を表しているのか?このように人間はいろいろと事情が分からないものに対し想像を巡らせるものです。

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最近「イチケイのカラス」という日本映画を見ました。えん罪を防ぐ為に、誰かに忖度したり、一方的な決めつけで判断したりすることなく、それこそ面倒くさがらず手を抜かずに捜査を行い、それに基づいて判断をすることの大切さを主題としている、裁判所を舞台とした漫画を原作のリーガルサスペンスだと思います。私自身は、そもそも、主観に囚われず、柔軟に物事を見通し、公平に判断をくだすことを心がけているため、その大切さを訴える漫画やドラマが世間で受け入られるようになったことに対してはうれしさを覚えます。このドラマの掲げるテーマの中でなるほどと思ったのは、「罪を犯した人にも罪を償う権利がある」というものでした。

物語で描かれているのは、誰かが罪を犯したとき、その罪を他の誰かが勝手に「かばったり」、勝手に「かぶったり」したシーンでこの「罪を犯した人にも罪を償う権利がある」ということを認識させるシーンが出てきます。このテーマには、他人の問題に他人が勝手な判断で踏み込まないこと、そして、踏み込んだことに対しまるで良い事をしてやったかのような優越感を覚えないこと、というのが背景にあるように私には思えました。

私は学生達に、勝手な思い込みをしないこと。そして、勝手な思い込みに基づく言動を他人に押しつけないこと、をいつも教えています。わかりやすい例でこれを説明しましょう。

就職活動をしていたある学生さんとの会話です。

先生:就職活動の状況はどうですか?

学生:ほっといてください。先生には関係無いでしょ?

先生:そうですね、自分なりに進めているのであれば良いですね。頑張ってください。何か相談事があれば遠慮無く言ってくださいね。

学生:自分の就職活動のやり方は特殊です。これを理解してくれる先生なんてこの世にはいないと思います。どうせ反対されたり、自分の意には反する意見をされたりするので、気にしないでください。

先生:それって、「先生というのは学生さんの意見を理解してくれないに決まっている」という勝手な思い込みに基づいていますよね。しかも、実際に目の前にいる先生は、まだ何も言葉を発していないのに、「どうせ反対したり意に反する言葉をなげかけるはずだ」と決めつけて、実際には発していない言葉をさも発したかのように想定して先生を批判したり中傷していませんか?

学生:。。。

先生:先生がどんな反応をするか試してみませんか?もしも、その結果、あなたがいうような事になれば、批判すればよいじゃないですか?

そうなんです。イチケイのカラスで出てくる「罪を犯した人をかばう」行為も、学生が「どうせ先生なんて自分を否定するに決まってる」という考えも、全て、勝手な思い込みで他人を判断しているのです。しかも前者は、「かばうことが罪を犯した人の為になる」と自尊心を高め、本当に罪を犯した人の気持ちは考慮されていない。また、後者は、実際には何もしていない先生が、学生に対し何かをしたかのようなことになっています。先生が本当は何を思い何をするかは無視されています。

このように、「どうせこうだろう」と自分の勝手な思い込みで、本来は他者にある決定権を奪う行為に対し、もう一度見直したいものです。

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2023年10月11日 (水)

アンテナ伝播分野の研究者にとって世界最大かつ最高峰の国際会議IEEE AP-S2023において講演および研究者間の交流を行いましたので報告します。

講演内容

T. Kanamori and M. Matsunaga, "A Novel Loop Antenna Easily Matching with Radio Frequency Integrated Circuit Chips," 2023 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation and USNC-URSI Radio Science Meeting (USNC-URSI), Portland, OR, USA, 2023, pp. 1499-1500, doi: 10.1109/USNC-URSI52151.2023.10237905.

reprintご希望の方は、ReserachGateからご連絡ください。ちなみに、Kanamoriは松永研のM2です。発表予定でしたが、直前になって親御さんと当人が渡米に対し(根拠のない)不安を表明し拒否したので、名前だけ残っています。

静岡大学内の共同研究で開発中の高効率レクテナ(Rectenna)開発に関する研究論成果です。なお、RectennaとはRectifying Antennaを短縮して作られた造語であり、整流回路とアンテナが一体化したものをそう呼びます。

整流回路部分については、LSI設計の研究室である丹沢研究室が、また、アンテナ部分については松永研が担当して開発しています。ポイントは、整流回路の整流効率を最適化する入力インピーダンスを検討した上で、この整流回路のインピーダンスと整合がとれるアンテナインピーダンスを実現する検討です。

RFIDタグのチップインピーダンスはその構成上の制約で複素数となるため、RFIDタグアンテナの入力インピーダンスもこれと整合をとる必要があり、アンテナの入力インピーダンスを複素数で実現するようになりました。その当時は、チップインピーダンスと整合をとることのみに注力していましたが、アンテナも含んだ等価回路でレクテナ(整流回路とアンテナ)を考え整流効率を最適化するインピーダンスの検討はなされてきませんでした。この検討の難しさは、アンテナが実現できる複素インピーダンスに制約があったことも大きな理由です。

この講演で発表したアンテナは、LSIチップとの整合がとりやすい上に、従来のダイポールアンテナと同様の放射特性を有することが特徴です。

私の講演がプログラムされたセッションは、開始直後は聴講者が少なく心配しましたが、私の講演開始時刻の直前から一気に聴講者が増え、多くの方に講演を聴いてもらえました。また、多数の質問が得られ、久々に有り難い機会が得られました。

とはいえ、「アンテナの入力インピーダンスは50Ωであるべき」と信じ込んでいる方々がRFIDの実用火から20年経った今でもいること、そして、50Ωではない入力インピーダンスを有するアンテナの測定方法について知識や経験のない研究者が多い事に驚きました。

これからも、これらが多くの方に理解出来、そして、実用にいかして頂ける、そんな論文発表をこれからも続けていきたいと改めて思った次第です。

写真説明 左:会場入り口に設置された看板 右:会場を隣の高層ビルから撮影(オープニングが会場前の広場であり、人々が交流を楽しんでいる風景とともに)

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3年にも及び海外渡航困難

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年3月に予定していたコペンハーゲン(デンマーク)への国際会議における講演出張が、デンマーク政府が講じた入国規制の影響で頓挫して以来、約3年ぶりに国際会議において対面で講演を行いました。

毎年2月~3月は、アメリカへの共同研究打ち合わせのための渡航とヨーロッパで開催される国際会議への出席のため、東へ西へと飛び回り、ひどい時差惚けで体内時計がどの時間帯にあっているかも不明になる生活を送るのが日常だった私にとって、とても待ち遠しかった3年でした。

2020年2月は、いつも通りアメリカの数都市を訪問し複数の研究者と交流しておりました。コロナウィルスへの危機感が高まりつつある時期で、交流する人々とも、お互い気をつけようねといった会話がかわされたものの、それから3年も渡航できる機会を失うとは想像だにできませんでした。3月上旬に一旦帰国し、1週間もしないうちにコペンハーゲンへ飛ぶ予定でしたが、そこで、ストップが入りました。

北米内やEU内は国際会議の対面開催が早くに再開されていた

ご存知の方も多いと思いますが、各国の水際対策よりも私たちを困らせたのは、所属機関の規制でした。

日本国内において最後に発出された緊急事態宣言が解除されたのは2021年9月末でした。その間、国内であっても移動が所属機関により規制され、国内出張すらできない時期が2020年3月以来約1年6ヶ月続いたことになります。

海外への渡航規制も徐々に緩和されたものの、所属機関・日本国政府・出張先で行う手続きが複雑かつ手間がかかり、躊躇しました。その一方で2022年末頃からは、北米やEU内で開催される国際会議が対面のみの参加に限定しはじめました。つまり、オンライン参加や発表を許容しなくなりました。そのことを考えると、日本人研究者が国際会議へ対面で戻ってくるのには更に約1年を要したことになります。

世界における競争力を有する日本の研究者の一人として、日本の世界におけるイニシアティブを示すことが出来ない時期が長かったと思います。

日本から?と驚かれる日本人

理由の分析は出来ていないのですが、この国際会議期間中、会う人会う人、「え?日本から?」と驚かれる事が本当に多かったです。以下、考えられる理由です。

「日本人の対面参加が3年近くなく、対面開催が再開されても1年~1年半の間日本人の姿を見ることがなかったか?」

まぁ、そうでしょうねぇ。数は少なくても頑張っていた研究者はいたと思うのですが、圧倒的に数が少ないため、日本人の意気込みが感じられなかったんでしょう。私が思うに、昨今の、日本以外のアジア勢の勢いに比べると、日本人の熱意が薄い、本当に薄い。それは、世界は実感しており、本当に顕著に表現してくれます。

「いつもの事ですが、日本人女性にはアンテナ伝播分野の研究者はいないと思われている」

これ、本当に残念な事なんですが、世界はそう思っているんですよねぇ~。それは、私が国際会議デビューをしたM1(修士課程1年生)の頃からちっとも変わっていない。もうそろそろ何とかしませんか?

その一方で、女性の参加者が体感的に激増していました。本当にうれしいです!世界はそうなんですよ!日本のみなさ~ん!分かってます?

「私が日本人に見えない」

実は私、世界中のどこにいても「日本人」にみられない事が多いです。そう考えると、「え?あんた日本人なん?」というリアクションを久しぶりに感じたのかも?

まぁ、アジア人差別は別です。今度書きますが、2020年2月~3月に渡米した際も、空港で、久しぶりにひどいアジア人差別受けました。言葉がわかるだけに辛いです。

たぶん、立ち居振る舞い、そして、感性が日本人ではないからでしょうね~

私にしてみると、日本で生きていると生きづらさを感じます。日本人でいる必要がないことを実感できる、最高の時間でした!

では、また~

2023年8月18日 (金)

松永研の学生さんの受賞報告です。

2023年4月17日にハイブリッド開催(※)された、IEEE MTT-S/AP-S Midland Student Express(中部地区学生発表会)において、松永研の本間代典さん(M2)がIEEE AP-S Midland Student Express Award(アンテナ・伝搬に関する最優秀賞)を受賞しました。

※対面会場:ウインクあいち(名古屋市)

本学生発表会は、IEEE MTT-S および AP-SのNagoya Chapter(東海・北陸を含む中部地区)が主催し、毎年4月と12月に開催しています。ここ数年はCOVID-19の感染拡大の影響で開催中止やオンライン開催が続いておりましたが、2023年4月は対面とオンラインで発表・参加が可能なハイブリッド開催いたしました。

中部地区(静岡県、愛知県、三重県、福井県、石川県、富山県、岐阜県)の大学や高専に在籍する学生さん15名が、マイクロ波やアンテナ・伝搬に関する研究成果について発表を行いました。また、発表はIEEE MTT-SおよびAP-SのNagoya Chapter役員を中心とする審査員により厳正なる審査が行われ、アンテナ・伝搬に関する研究発表を行った松永研の本間代典さんがIEEE AP-S Midland Student Express Awardを受賞しました。また、マイクロ波に関する研究発表を行った名古屋工大の学生さんがIEEE MTT-S Midland Student Express Awardを受賞しました。

本間さんは「Multi-Stage Tapers Suppressing Sidelobes and Beamwidth Fluctuations of Vivaldi Antennas」と題し、生体イメージング技術で有用されているビバルディアンテナの放射特性を広帯域にわたって改善する手法についての研究発表を行いました。提案手法により、イメージング技術の高性能化が期待でき、生体イメージングのみならず、電波観測においての応用も期待されています。

本間さんは、M1から松永研で学んでいますが、並々ならぬ努力の結果、このような結果を得る事ができました。大手有名企業から内定を得ており、2024年3月に修士課程を修了予定です。現在は修士論文の作成とともに、得られた成果を学術誌論文へ投稿すべく日々努力を重ねています。

Mse2023_homma 研究室前で賞状を手にする本間さん

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賞状

2023年4月 5日 (水)

久々にアメリカで開催される国際会議へ出席できる予定です。

私が所属し主な活動の場としているIEEE AP-S(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Antennas and Propagation Society)のメインの国際会議である、2023年IEEE AP-Sへ投稿していた国際会議論文が採択されました。今年の7月にオレゴン州のポートランドで発表予定です。

いやぁ~最後に渡米したのが2020年の3月ですから約3年ぶりです。その間開催された国際会議にはオンライン参加でしたから、本当に久々の国際会議への現地対面参加となります。

もともとITオタクで、オンライン大好きの私ですから、コロナ禍における様々なデジタル化は大歓迎+大助かりでした。やっと時代が私に追いついてきたのか?とも思いましたが、さすがに、国際会議だけは対面参加でしか得られない事が多く、ようやっとといった思いです。

肝心の発表内容ですが、プログラムが発表された後に再度お知らせしますね。

とはいえ、久々のヒットだと思っております!つまり、小型アンテナの定番となるアンテナになると確信しています!詳細は、本国際会議に限らず、学術雑誌にも順次掲載していく予定です。乞うご期待!

本国際会議論文は修士の学生さんと共著です。学生論文賞や、海外渡航費助成へも応募中ですので、その結果についても順次お知らせしていく予定です。

IEEE AP-S/URSI 2023のホームページ

2023年2月15日 (水)

学生さんに関する報告です

最近、まとめて複数投稿するようになってしまい申し訳ないことです。定期的に更新出来るようにしたいな、と思う今日この頃です。

2023年2月15日は卒論発表会でした。松永研のB4生4名が発表会へのぞみ、無事卒業論文の単位を取得することができました。

発表者氏名と卒論タイトル及び概要は以下の通りです。

  • 関森絃太 「直列給電マイクロストリップアレーアンテナによるビームステアリングの検討」
    • アンテナから放射する電波ビームをステアリングさせる新しい技術です。並列接続したアレーアンテナよりもコンパクトです。近々国際会議と学術誌論文として発表予定です。
  • 山田雅也 「金属対応ICタグ用マイクロストリップアンテナの検討」
    • バーコードに代わる商品管理システム機器であるRFIDのアンテナに関する研究です。標品管理を担うには、金属製の物品にも使える必要がありますが、電波は金属の影響を多大にうけるため、なかなか難しいのです。この研究を基礎に、松永イズムが感じられる画期的アンテナが発表される日も近いことでしょう。
  • 小林義和 「人工磁気導体を用いたKa帯クロススパイラルアンテナの航空機搭載応用」
    • 松永が過去に発明したアンテナであるクロススパイラルアンテナをミリ波隊に応用しました。金属が近接しても性能が維持できるように、人工磁気導体も搭載しました。
  • 杉山彰 「UHF帯マイクロストリップアンテナの小型化の検討」
    • マイクロストリップアンテナ(通称パッチアンテナ)って、UHF帯(昔のテレビのUチャンネル)では大きすぎるんですよね~小型すると性能が落ちるし。。。という訳で、いろいろと試してもらいました。基礎的な研究ですが、とっても大事な検討です。

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2022年12月26日 (月)

M1(大学院修士課程1年生)の中間発表が無事修了しました。

修士課程学生に対する中間発表(M1対象)は実施する大学としない大学があります。最近は、多くの大学で実施しているようです。その理由は、研究室活動を実質化するためです。

工学部をはじめとする多くの理系の学部学科では、大学院の学生は研究室に所属し、所属した研究室が進めている研究活動に参加しながら高度な専門的知識と経験を積みます。工学部の人々は「研究室活動」と呼びます。ちまたではゼミと呼ぶ人のいますが、日本の工学部ではゼミとは呼びません。

大学院生の主な活動は、この研究室活動です。研究室活動を通じて得られた成果を論文にし、この論文内容が各課程(※1)の合格基準に達していなけえば、課程を修了(卒業)することができません。

一昔前(2000年頃)までは、この常識(大学院生というのものは各課程の論文(修士論文もしくは博士論文)を執筆するのが主な仕事であり、論文を書くためには、自主性をもった研究活動を行い、独自性のあるテーマで、学術的に新規的かつ重要な研究内容について、学術誌掲載レベルの論文執筆技術を持たなければならない)が分かっている人が大学院に進学する事が多かったので、毎日研究室へ通い、日々研究室活動に勤しむことは当たり前でした。

しかし、2010年頃から諸般の理由で、この常識が大学院生にとって当たり前ではなくなり、研究室活動を授業の一環として時間割に組み入れたり、成績評価を実質化したりする必要性が高まりました。中間発表も、一般的に2年間でプログラムされている修士課程の1年目の成績評価のために、多くの大学で実施されています。

この諸般の事情の中には、学生さんの意識(保護者の意識も含まれる)への働きかけが大きいと思います。時間割に組み入れられていないと、「何故、研究室へ毎日通い勉強する必要があるのか?」と思う学生が増えてきたからです。このような学生は、大学学部1年生の頃と同様に、授業だけ出席し、それ以外の時間は全てアルバイトや趣味などのプライベートな時間として過ごしてしまい、2年経過した頃に「修士論文を提出してください。提出しないと課程を修了(卒業)できませんよ」と言われ、そこで初めて、前述したようなプライベート時間ばかりの大学院生生活を送っていると、課程が修了できないことに気付くのです。とはいえ、授業レポートと同様に一晩徹夜すれば書けると気楽に考えている学生さんもいますが、一夜漬けのレポートで合格できるほど甘い審査ではありません。

前置きが長くなりましたが、中間発表は、学生さんが計画的に2年間の研究活動を進める為にあるのです。計画的に進んでいるか?1年目の経過として2年目に卒業できる見込みが立つか?などを実質的に評価することで、前述したように、2年もの時間をほぼプライベートに過ごし、終盤になって「あれ」ということにならないようにするのです。

松永研の3名のM1ですが、それぞれに1年間の努力が結果に表れた発表となりました。今日からが修士課程の折り返しです。丁度1年後には修士論文の提出と発表があります。そこへ向かって頑張ってください!

※1:ここで各課程とは、修士課程(博士前期課程)と博士後期課程の事を指します。大学院へ進学する多くの学生さんは、修士課程の修了および修士号の学位取得をもって企業等に就職しますので、一般的に大学院卒業と言えば、修士課程修了を指しています。大学の先生など、より高度な知識を必要とする職業に就くには、博士後期課程を修了し博士号の学位を取得する必要があります。ちまたでは、あそこのお子さんMBAを持ってらっしゃるんですって、とか、私はMBAを持っている、と誇らしげにおっしゃる方をみかけますが、このMBAとはMaster of Business Administration の略で、経済学の修士号のことを指します。ですから、この学位をお持ちの方々は、経済学に関する大学院の修士課程を修了されたということになります。

2022年11月 8日 (火)

今年も卒業アルバム用の写真撮影をしました。静岡大学へ赴任して2回目の撮影、少しずつ学生メンバーの数も増えています。

今年の写真

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11月に入り、朝晩は摂氏10度以下になる日もありますが、この日は気温も20度程度、秋晴れの写真撮影でした。

前列の5名が学部4年生、後列の3名が修士1年生です。撮影場所は、浜松キャンパスのメインストリートにある噴水前。といっても噴水はほとんど映り込んでいませんね。後ろに映っている3階建ての建物は、「S-Port」という名前の事務室棟と図書館棟です。学生さんにとっては、新入生の頃から何かと手続きやと図書館利用のために利用する事の多い建物とのことで、今年はここで撮影することになりました。

M1は12月末の中間発表会、B4は2月中旬の卒業論文発表会へ向けて頑張っています!

2022年10月19日 (水)

ようやっと行動規制も緩和され、学会や研究会も対面で開催されるようになりましたので、学生さんと電子情報通信学会アンテナ伝播研究会へ参加しました。10月の本会は、学生さんのポスター発表の場と、学生さんと企業さんとの交流イベントが提供されるため、就職活動を始動する修士1年生が松永研からは例年参加しています。今年は修士1年3名がポスター発表を行いました。

当該イベントの詳細はこちら

「百聞は一見にしかず」という諺もありますが、発表資料等について先生がいろいろと助言をするより、多くの人々へ発表を聞いてもらい、そして直に人々の反応を目にし耳にし感じる方が、多くの知識と経験につながるようです。

今回は、3人とも新規アンテナの提案に関する発表を行いました。発表タイトルは以下の通りです。

  1. ビバルディアンテナのサイドローブをより広帯域で抑制できる多段テーパ(本間代典・松永真由美)
  2. 広帯域で単一指向性を有する無給電素子付ボウタイアレーアンテナ(足立雅樹・松永真由美)
  3. RFICと整合するUHF帯二重ループアンテナ(金森拓海・松永真由美)

当該研究会プログラムはこちら

1は、電波天文学用の広帯域な平面アンテナに関する研究成果です。各種イメージング技術にも応用可能です。まだまだ改善点や課題がありますが、SKA計画の様に膨大な数のアンテナを用いる観測機器においては、設置や製造が容易な簡便構造のアンテナが求められていることから始めた研究内容です。

2は、乳がんなどの生体イメージングへの応用を目指したイメージング用の薄型広帯域アンテナに関する研究成果です。生体イメージング技術の開発は、シグナルプロセッシング技術やデータ処理アルゴリズムの開発の方に興味が注がれる事が多いのですが、アンテナの高性能化や小型化も重要なキーテクノロジーです。イメージングにおける解像度はアンテナのビーム幅や帯域に依存します。また、アンテナが大きくなれば装置が大型になってしまいます。これらの問題を解決することを目指した、アンテナです。

3は、最近注目度が急上昇しているRFIC(Radio Frequency Integrated Circuits)と組み合わせが容易なアンテナに関する研究成果です。RFIC技術として最も身近な技術はRFID(Radio Frequency Identification)です。皆さんが通勤通学で毎日利用している交通系ICカードに用いられている技術ですね。実は従来、アンテナの入力インピーダンスは50オームで設計していました。一方、ICの入出力端子におけるインピーダンスは50Ωとはかけ離れています。つまり、そのまま接続してしまうとアンテナとICの接続部におけるインピーダンスの不整合に起因した損失が発生してしまうのです。従来は、インピーダンス整合回路をアンテナに取り付けることで解決していましたが、アンテナ自身のインピーダンスをICに合わせることで解決しようとしています。RFIDタグへも応用が可能な小型で高効率のアンテナができました。

次の学会や論文発表へ向け日夜努力を続けています。次回の発表をお楽しみに!

緊張しながらポスター発表に臨むM1メンバー

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2022年4月23日 (土)

学生さん(M1)2名が学会発表をしました。

発表したのは、IEEE MTT-S/AP-S Nagoya Chapterが主催する中部地区学生発表会2022Springです。

大学生時代から海外を含め、いろいろな土地で活動をして参りましたが、実は、静岡県がカテゴライズされる中部地区での活動は私にとって初めての地なのです。どの範囲が中部地区と呼ばれるかについてすら、ほとんど意識せずに生きてきましたので、なんとも不思議な気持ちでおります。

IEEE MTT-S/AP-S Nagoya Chapterというのは、米国に本部がある電気電子通信系の学会IEEEの、マイクロ波やアンテナ・電波伝搬に関する研究者の、中部地区のコミュニティーのことです。中部地区なのに何故「Nagoya Chapter」なのかについてはお察しください。他にも、九州地区は「Fukuoka Chapter」, 中国地区は「Hiroshima Chapter」といった具合に、その地区の代表的な都市名が付けられている、なんとも不思議なコミュニティです。(※個人の意見です)

とはいえ、静岡大学赴任初年度からこの「IEEE MTT-S Nagoya Chapter」の運営役員をやっている関係で、運営(裏方)もやりながら、学生さんの発表もサポートしながら、と忙しい日々をおくっておりました。

関連リンク:IEEE MTT-S Nagoya Chapter

2名の学生さんが、B4の時に勤しんだ研究内容について発表しました。今回は、惜しくも優秀発表賞を逃しましたが、次回は狙うぞ!と、日々努力しています。